記事要約
英語学習を仕事と同じように前に進めたいなら、「頑張った量」ではなく“変化が起きる仕組み”をKPIで作るのが近道です。そのとき有効なのが、行動(会議での確認・要約など)と測定(VERSANTなど)の二階建てにすること。VERSANTは10〜90を1点刻みで評価し、できることが詳細に定義されるため、定点観測に向きます(出典:https://www.versant.jp/score.html )。ただしスコアだけを追うと実務が置き去りになります。本記事では、管理職が部下やチームに展開できるKPI設計テンプレ、忙しい前提の週次運用、数値が動かないときの切り分け、独学運用か支援導入かの判断基準までを具体的に解説します。
英語学習のKPIは「行動KPI」と「測定KPI」の2階建て
行動KPI(会議で要点確認を入れる等)
英語学習のKPIを作るとき、最初にやりがちなのは「テストの点を上げる」をKPIにしてしまうことです。もちろん点数は大事ですが、管理職が成果を出すなら、点数より先に“仕事で増やしたい行動”をKPIに置いたほうが、学習が止まりません。
理由は単純で、仕事は点数では進まないからです。英語会議で重要なのは、話せるかどうかの印象より、議論を前に進める行動が増えることです。たとえば、聞き取れない箇所を放置せずに前提を確認する。論点が散ってきたら30秒で要点をまとめる。結論が決まったら次アクションを確認する。こうした行動は、語彙が完璧でなくてもできます。
管理職がチームに求めるのも、流暢さより「会議で止まらない」「判断が早い」「手戻りが少ない」といった業務行動の変化です。だからKPIも、行動で置きます。
例としては「週3回以上、会議で確認質問を入れる」「毎回の定例で、最後に要点要約を一度入れる」「議論の途中で“結論→理由→次の一手”の順で30秒発言する」などです。
ここでのコツは、数を増やすより“場面を絞る”ことです。会議・商談・プレゼンの全部を同時に狙うと、何も変わりません。まずは最も頻度が高い場面を一つに決め、その場面で必要な行動を1〜2個だけ設定します。
測定KPI(VERSANTなどの定期測定)
行動KPIだけだと、主観になりやすい問題があります。そこで二階建ての二つ目として、測定KPIを置きます。測定KPIの役割は「伸びているかどうか」を定点観測し、改善の議論を可能にすることです。
VERSANTは、スコアがCEFRに準拠したGSE(Global Scale of English)に基づき10〜90の1点刻みで評価され、スコアごとに「英語でできること」が詳細に定義されると説明されています(出典:https://www.versant.jp/score.html )。この“1点刻み”は、KPIに向いています。四半期ごとではなく、もっと短い単位で変化を掴みやすいからです。
ただし重要なのは、測定KPIは「行動KPIの結果」として扱うことです。測定KPIを主にすると、学習がテスト対策へ寄り、実務の行動が増えません。行動KPIを先に置き、測定KPIは“健康診断”の位置づけにする。この順番が、管理職にとって扱いやすいKPI設計です。
VERSANTをKPIにするメリットと注意点
メリット:定点観測しやすい/改善の議論ができる
VERSANTをKPIにする最大のメリットは、チームで「改善」を会話できることです。英語力は曖昧な言葉になりがちです。「話せるようになった気がする」「まだ不安だ」。この会話は、上司も部下も疲れます。
一方でスコアがあると、変化の有無を客観的に確認できます。さらにVERSANTは、学習者が今の英語力で何ができるかをGSEとして把握でき、課題や伸ばすべきスキルを明確にできると説明されています(出典:https://www.versant.jp/score.html )。つまり、測るだけで終わらず、改善点の議論につなげやすいということです。
管理職の立場だと、次のような運用が現実的です。月1回は測定KPIとしてVERSANTを取り、週次では行動KPIの達成状況(確認質問が言えたか、要約が言えたか)をレビューする。すると、スコアの上下に一喜一憂せず、行動の変化を積み上げられます。
注意:スコアだけ追うと実務が置き去りになる
注意点は、スコアが“目標”にすり替わることです。スコアを上げること自体が目的になると、会議で必要な行動が増えません。たとえば、発音の整え方に時間を使いすぎて、確認質問や要約の練習が薄くなる。結果として、点数は少し上がっても、会議での沈黙が減らない、ということが起きます。
また、スコアの変化には時間差があります。行動が先に変わり、スコアは遅れて動くことが多い。ここを理解せずに短期でスコアだけを追うと、学習が止まります。
管理職としては、スコアの説明を「評価」ではなく「改善の会話の共通言語」に戻すことが重要です。たとえば「今回の測定で伸びなかったのは失敗ではなく、今週のテーマがずれていた可能性が高い」という扱いにします。責める材料にしない。改善の材料にする。この線引きができると、チームの英語学習は回り始めます。
KPI設計の作り方(管理職向けテンプレの考え方)
目的→業務場面→必要行動→測定の順で落とす
KPI設計で一番重要なのは、順番です。管理職がやるべき順番は、目的→業務場面→必要行動→測定です。
たとえば目的が「海外プロジェクトの定例で、意思決定に参加できる状態を作る」だとします。すると業務場面は「週1回の英語定例」に絞れます。次に必要行動は、議論を前に進める行動に落ちます。確認質問、要約、次アクション確認。最後に測定として、月1回のVERSANTを置く。これで二階建てのKPIが完成します。
ここでのポイントは、英語力を直接KPIにしないことです。英語力は抽象で、日々の行動に落ちません。行動へ落ちるから、週次で回せます。
分かりやすいテンプレとして、次の表に落としておくと、部下との1on1でも使えます。
| 目的(何のため) | 業務場面(どこで) | 必要行動(何をする) | 測定(どう確認) |
|---|---|---|---|
| 会議で意思決定に参加 | 週次定例 | 確認質問を1回入れる | 週次:実施有無/月次:VERSANT |
| 論点を揃えて合意形成 | 討議ミーティング | 30秒要約を1回入れる | 週次:録音チェック/月次:VERSANT |
| 手戻り削減 | 仕様確認 | 次アクション確認 | 週次:実施回数/月次:VERSANT |
表は“完成形”ではなく、叩き台です。実際は、部下の役割や会議参加度で調整します。
指標は多くても3つに絞る(継続優先)
管理職が英語学習を回すとき、最大の敵は“盛り込みすぎ”です。KPIが多いほど続きません。仕事でもKPIは絞るのが基本ですが、英語学習はさらに絞る必要があります。
おすすめは、行動KPIを2つ、測定KPIを1つの合計3つです。行動KPIは「確認質問」と「要約」など、性質が異なるものを選ぶと効果が出やすいです。測定KPIは月1回のVERSANTのように固定します。
3つに絞る理由は、改善が速くなるからです。指標が多いと、どれを直すべきか分からず、修正が遅れます。指標が少ないと、週次で1つ直すテーマを決めやすくなり、改善が回ります。
運用|週次で回す改善サイクル(忙しい前提)
週次レビューで見る項目(録音・発話量・詰まり)
英語学習をKPIで回すとき、運用は週次が最も現実的です。毎日レビューは回りません。月次では遅すぎます。週次なら、忙しい管理職でも15分で回せます。
週次レビューで見る項目は、三つに絞ります。録音、発話量、詰まりです。録音とは、会議で言いたい要点を30秒で録音したものです。発話量は、会議で実際に何回口を開いたかの自己申告でも構いません。詰まりは、聞き返せなかった、要点が言えなかった、などの“失敗場面”を一つだけ特定します。
ここで、録音を使う理由は、主観を減らせるからです。録音があると「結論が先か」「言い直しが長いか」が確認できます。会議の録音が難しい場合でも、会議後に30秒で要点を録音するだけで、十分な材料になります。
直す点は1つだけに絞る(改善速度を上げる)
週次レビューの結論は、必ず「来週直す点は一つだけ」にします。これがKPI運用の核心です。
例えば、今週は確認質問が言えなかったとします。原因は、聞けなかったのか、質問文が出なかったのか、遠慮したのか。原因が複合でも、来週は一つに絞ります。「質問文を固定する」にする。すると翌週は、質問文の反射練習が中心になります。
改善点を一つに絞ると、部下も動きやすくなります。やることが明確だからです。逆に三つ直そうとすると、何も直りません。
忙しい前提の運用では、下限メニューを決めることも重要です。週のどこかで崩れる前提で、「最低これだけはやる」を決めます。例えば平日は、音声反復10分+30秒録音10分だけ。これを下限にします。下限が守れれば、スコアより先に行動が変わります。

部下やチームに展開する方法(研修設計の視点)
個人差が出るポイント(役割・会議参加度)
チーム展開で難しいのは、個人差です。役割が違えば必要な英語行動も違います。参加度が違えば発話量の目標も変わります。
例えば進行役は要約と合意形成が重要です。参加者は確認質問と短い意見表明が重要です。資料説明役は、結論→根拠→次アクションの型が重要です。役割によってKPIの行動部分は調整すべきです。
だから管理職がやるべきは、全員に同じ教材を配ることではありません。全員に同じ型(設計テンプレ)を配り、個別にKPIを作ることです。
共通化できる型(要約・確認・次アクション)
一方で、共通化できる部分もあります。多くの職種で効くのは、要約・確認・次アクションです。会議が止まる原因の多くは、ここが曖昧だからです。
研修としては、三つの型を全員に共通で入れ、個人のKPIはそこから選ばせるのが現実的です。例えば「要約は30秒」「確認は二択で聞く」「次アクションは担当と期限を言う」。この三つの型は、英語が完璧でなくても実行できます。
この型がチームに入ると、英語学習が“個人の趣味”ではなく“業務改善”になります。管理職としては、ここまで落とせると、英語学習投資の説明がしやすくなります。
数値が動かないときの原因切り分け
学習量のブレ/練習のズレ/弱点放置
KPI運用をしても、数値が動かない時期は必ずあります。そのときに必要なのは、精神論ではなく切り分けです。原因は大きく三つに分かれます。学習量のブレ、練習のズレ、弱点放置です。
学習量のブレは、ゼロ日が増えている状態です。忙しい週が続くと、下限メニューが守れなくなります。この場合は、下限をさらに下げるほうが効果的です。10分に落としてでもゼロを作らない。ここを守ると、再び上積みが可能になります。
練習のズレは、測定KPI(VERSANT)を意識しすぎて、実務行動が増えていない状態です。例えば発音の練習ばかりして、要約・確認の練習が薄い。この場合は、行動KPIへ戻します。会議での一文目が増えているか、確認質問が言えているか。ここを直せば、測定KPIも後から動きやすいです。
弱点放置は、同じ詰まりが繰り返される状態です。例えば、毎回“聞き返せない”で終わる。原因は、質問文が固定されていない、あるいは聞き取りの処理速度が遅い、などです。弱点放置が起きると、練習の手応えが減り、継続が崩れます。
1か月で立て直す手順(再診断→テーマ固定)
数値が動かないときの立て直しは、1か月あれば十分です。やることは二つです。再診断とテーマ固定。
再診断では、直近の失敗場面を一つ選びます。会議で言えなかった一文、聞き取れなかった一節、要約が長くなった場面。これを材料に、詰まりが「聞く」「要点」「言う」のどこかを決めます。
次にテーマ固定です。1か月は、改善テーマを一つに固定します。例えば「確認質問」。この1か月は、確認質問の型だけを反射で出せるようにする。録音で短くする。会議で必ず一回入れる。これだけに集中します。
1か月後に、測定KPIとしてVERSANTを取ります。結果は合否ではなく、次のテーマ決めの材料です。ここまでが、管理職が回せる最小の改善サイクルです。
独学運用か、支援導入かの判断基準
管理だけでは解決しない領域(診断・自動化)
KPIを作り、管理すれば伸びる。これは半分正しく、半分は危険です。管理だけでは解決しない領域があるからです。それが診断と自動化です。
診断とは、詰まりの原因を正しく当てることです。自己診断がずれると、どれだけ管理しても伸びません。自動化とは、短い表現を反射で出せるようにすることです。ここは量だけでなく、練習の質(反復の仕方)で差が出ます。
管理職としては、部下が「何を直すべきか分からない」「毎週テーマが変わる」「忙しい週にゼロになる」状態なら、独学運用の限界を疑います。
導入前に確認すべき要件(成果定義・頻度・仕組み)
支援導入を検討するなら、サービス名より要件を先に決めるのが失敗しにくいです。成果定義(会議で何が増えるか)、頻度(週次レビューが回るか)、仕組み(診断とフィードバックが具体か)です。
例えばトライズ(TORAIZ)は、公式で「1年で1,000時間の学習量」を掲げています(出典:https://toraiz.jp/about/study/ )。また、VERSANTを活用した取り組みも告知されています(出典:https://toraiz.co.jp/news/2021%E5%B9%B410%E6%9C%8828%E6%97%A5-%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%81%AB%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E5%8A%9Bversant47%E7%82%B9/ )。ただし保証や条件は時期やコースで変わり得るため、導入判断では必ず公式の最新情報を確認してください。
支援を選ぶときの最重要ポイントは、「次に直す点が一つに絞られ、忙しい週でも回る設計が出るか」です。ここが具体なら、KPI運用は加速します。
よくある質問
Q1. 英語学習のKPIは、スコアだけで十分ではありませんか?
十分ではありません。スコアは遅れて動くことが多く、実務の行動が増えているかが先に重要です。行動KPI(会議での確認・要約など)と測定KPI(VERSANTなど)を二階建てにすると、改善が止まりにくくなります。
Q2. VERSANTをKPIにする頻度はどれくらいが現実的ですか?
組織や個人差があるため一律には言えませんが、運用上は月1回程度の定点観測にして、週次では行動KPIをレビューする形が回しやすいです。VERSANTは10〜90を1点刻みで評価し、定点観測に向くと説明されています(出典:https://www.versant.jp/score.html )。
Q3. 行動KPIはどう決めればいいですか?
目的→業務場面→必要行動の順で決めます。最初は会議・商談・プレゼンを全部狙わず、頻度が最も高い場面を一つに絞り、行動は1〜2個にします。
Q4. 数値が動かないとき、まず何を疑うべきですか?
学習量のブレ(ゼロ日増加)、練習のズレ(スコア対策に寄りすぎ)、弱点放置(同じ詰まりの反復)のどれかです。切り分けて、1か月はテーマを一つに固定すると立て直しやすいです。
Q5. 部下に英語学習KPIを押し付けると反発されませんか?
反発は起き得ます。だからこそ「点数」ではなく「仕事の行動が楽になる」ことを成果定義にし、本人の業務場面に合わせてKPIを作るのが重要です。型(要約・確認・次アクション)を共通化し、個別に当てはめると納得感が出やすいです。
まとめ
英語学習をKPIで回すなら、行動KPI(会議での確認・要約など)と測定KPI(VERSANTなど)の二階建てにするのが現実的です。VERSANTはGSEに基づき10〜90の1点刻みで評価され、定点観測に向くと説明されています(出典:https://www.versant.jp/score.html )。ただしスコアだけを追うと実務が置き去りになるため、目的→業務場面→必要行動→測定の順で設計し、指標は3つ以内に絞ります。週次レビューでは録音・発話量・詰まりを見て、直す点は必ず1つに固定します。数値が動かないときは、学習量のブレ/練習のズレ/弱点放置で切り分け、1か月はテーマ固定で立て直します。独学で回らない場合は、診断と自動化まで含めて支援導入を検討し、成果定義・頻度・仕組みが具体に出るかで判断してください。


